ぼくの時間

 

 

深夜2時

 

頭より少し上の位置にある輪っかに手を伸ばす。

 

 

 

 

何をしても生きている心地がしない。

 

いつからだったかも、もうよく覚えていない。四角い部屋にずっと一人きり。寂しさなんてとっくにどこかへ置いてきてしまった。持ち合わせているのは、この家と残された両親の財産、そして使いものにならないこの命。味気ない というよりももっとこう、味なんて存在していない、色も形もない、空っぽのような毎日。それが過ぎていくのをただただ待っている。不思議なんだ、気がついたら今日が明日になっていて、でも心境も環境も何も変わらないから、自分だけが昨日のままで時に置いていかれてるような感覚。それなのにやっぱり時間の流れに自分は取り巻かれていて、ちゃんと今日を生きている。

 

何もしてないのに進んでいく。僕はあの日からちっとも前に進めてないのに、時間を始め、この家で命を絶った両親や、幼馴染み、好きだった女の子、陰口を叩かれたあいつや、心のどこかで馬鹿にしてたあいつでさえも、どんどん進んでいった。僕はここでずっと止まったままで、時間と現実に置いてかれて、毎日ゲームをしている。

 

 

輪っかに顔を通す。

 

 

 

 

 

僕は、僕は、どうしてこうなってしまったのだろう。この部屋にはまだ学生時代の制服が綺麗にかけられている。新学期になる都度、母さんがクリーニングに出してくれていたっけ。あの頃は、はやく大人になりたかった。僕はこんな馬鹿げたクラスメイトとは違う、立派な大人になるんだとそう思っていた。僕は、僕は、どうしてこうなってしまったのだろう。僕はちゃんと大人になれたのだろうか。僕は今いくつなのだろう。僕の両親の顔はどんなだっただろう。僕は何がしたいのだろう。僕は何になりたいのだろう。僕は一体誰なのだろう。僕は、僕は、どうしてこうなってしまったのだろう。

 

 

乗っていた椅子から飛び降りようとした。

 

 

 

 

 

午前5時

カーテンの隙間から、太陽の光が射しこんできた。

 

朝になってしまった。僕は食べかけのポテトチップスに手を伸ばす。もう2日も眠っていないような気がする。ベットに寝転んで数秒後、深い眠りについた。

 

 

彼はまた、いつもと同じ朝を迎えた。